envy live

xtremer2004-10-09

バカだから雨風が吹き荒れる中、ライブ行ってきました。
地元の駅に辿り着くまでに、もはや靴はグショグショだった。
ホームをズブズブ音を立てながら歩くのはたぶん恥ずかしかった。
自分はヘッドフォンしてたから聞こえはしなかったけど。
到着。ガラガラ。もちろん当日券買えた。
たくさん人が入ってきたのは開演するちょっと前だった。
トリだと思ってたら最初に出てきたからびっくりした。
っていうか、今日のライブは異色の面々を揃えた、
journey into soundとでも言うべき内容だった。

噂では、
モグワイのレーベルから最新作をリリースしていて、
相当ポストロックに影響を受けている、と聞いていた。
確かに、僕の持っている「君の靴と…」にも
ポストロックの片鱗とでもいうべき部分はある。

そんな思いを巡らせながら演奏が始まる。
予想通り、というか、時の流れをはっきりと
写し出すように、メンバーは少し年齢が高いような。
たぶん、若さと大人の中間にいた。
歴史あるバンドだけに、それは免れることのできない事なのだ。
だがそれが、
彼らの演奏やパフォーマンスが鈍っているという事とは
違う。
むしろ、僕はそれを彼らのキャリアとして体感した。
ギターの二人は存分に音に酔いしれて、
全身を使って音を出していた。
暴れる、とは異なる、
苦しみを吐き出すように体を揺さぶり、
音を奏でて己を満たす。
それは若者の衝動とは違う、
もっと違う次元の精神状態。
生み出して、受け止めて、流す。そんな音だ。
あるいは、envyの、envyそのものからくる力を
呼び起こして再生するような感覚。
ボーカルは叫ぶのに夢中で
マイクが音拾ってるかどうかなんてお構いなし。
流石だな…と感じた。プロだからこそ、そんな事はやらない。
僕はそこに、envyがenvyたる所以、彼等の音の真実を見出した。
この感情は説明し辛い。
まあ、強いて言えば、叫びたいから叫んでるだけ…と言ったところか。
「叫ぶのだけど、マイクが壊れていて…」
それが、僕の中のenvy像。

確かに、音はかなりポスト寄りになっていた。
じわじわと体に染み込んでゆく綺麗で悲しい旋律。
ここで感じたのは、
影響を受けた、というか、ポストロックになるべくして変化した。
と思った。
良くも悪くも、激情をぶつけるだけの音では、
体力的にも、精神的にもこの先継続するのは難しい。
音に逃げ場がないからだ。
自分の作った曲に殺される。
むしろ、音の一つ一つを拾って、じっくりと
味わうように奏でるやり方の方が、
激情にメリハリが付く。今までの音楽以上に。
そして、サビに向かうまでに、
深い音の世界へ自身が没入することができる。
それがポストロックたる自由度の高い音楽の特長なのだ。
音を追求した答えが、彼等のステージにはあった。
だから、サビはやはり激情剥き出しで、
むしろ、昔と変わらないenvyを続けていた時のものよりも、
今の方が強靭なソウルに変化しているのではないだろうか、とすら思った。
それはポストロックによって鬱屈した激情が、
はけ口を見つけてrush intoするような状態。

ボーカルは涙目だった。曲の途中で鼻をこすっていた。
これがいつもの姿なのか、それともやはり何か
異変が起こったのか、それは僕にはわからない。
何せ初めて観たのだから。
だが明らかに彼は動揺していた。
ギターも片方、ラストの曲が終わる直前でギターを床に落として
そのままステージ袖へ去った。
そして、みんな最後のノイズが響く中そそくさと去った。
僕は、at the drive-inのライブ映像を思い出した。
あれも、オマーが最後に曲が終わらない内に
ギターを投げ捨てステージを去っていった。
ATDIが解散したせいか、あまり嬉しくない
リンクが頭の中で、くしくもできてしまった。

最高のライブだった。
これは自信を持って言える。
音以外の部分、雰囲気というか、全体を包む空気、
envyのライブというノリ、独特のそれに
脳をやられた。
音以外の部分。こんなに「生の感情」を
ぶつける事のできる人間はそうはいないだろう。
実際、切なくてどうしようもなくなった瞬間があった。
僕に流れ込む悲壮な気持ち、この日々を打ち破ろうと
必死に叫び出したくなる衝動。
何もかもが数メートルの距離でダイレクトに
ぶつかってくる。これはヤバい。
心が感情で溢れそうになる。
これが、世界レベル。

幸運にもライブ後に、ボーカルの彼と少し話をすることができた。
年内はもう東京ではライブはやらないそうだ。
しかも大阪の方では活動するらしく、こっちで次に
ライブやるのは来年、しかも年明けすぐとかそういったレベルでは
ないようだ。
最後に、初めておとといCDを聴いて慌てて飛んできた胸中を伝えたら、
驚いて、そして喜んでくれていたようなので、
なんか良かった。僕が嬉しかった。
バンドの将来やライブの途中の涙目については
何も聞かなかった。
んな野暮な事聞くかよ!!

そしてクワトロを出ると、台風はどこえやら…
いつもと変わらぬ、のどかな、
いつもよりも静かな渋谷の夜がそこにはあった。

なにもかも僕に対して仕組まれている。
試されていた。それを確信した。
んで、
今日まで生きていて本当に良かった。

おしまい。